夜行列車
時は夕刻。天気は霧雨。睦月の終わり。夕焼けはなく、車窓は魚の内臓を思わせるどろんとした鈍い灰色に覆われている。世界の果てを駆ける列車に私は乗っていた。
地平線の向こうから徐々に炭化しボロボロと腐っていく街並みを、尾灯を灯したドブネズミのような車がノロノロと走っていく。それらはひたすら無機質でゆっくりと崩壊していた。列車はその崩れゆく世界を一定の速度で走っているのであった。
ゴォッと音を立てトンネルに入った。定期的に明滅する強い光。隣に座る老婆が干からびたベーコンのような手を掻きながら低い呻きを上げた。車内は明るいが線香のような匂いに包まれ、皆が死人のような顔をしている。胃のあたりで何かがボロっと崩れた音がした。しくしくとした痛みが広がってゆく。だが、その痛みはどこか遠くの違う誰かのもののように感じるのであった。車窓に映る自分の顔がトンネルのライトと重なり子供のように見える。唐突に理解した。痛いのは少年時代の自分であり、腹の底で静かに泣いているんだと。
再びゴォッと音を立て、列車はトンネルを抜けた。辺りは既に漆黒の闇に包まれ、遠くにハイウェイの街灯が微かに見える。私はゆっくりと目を閉じ眠りについた。ただただ、この目が覚めないことを祈りながら…。涙が一筋流れたが、直ぐにバサバサの土くれとなった頬に吸収され消えてしまった。無明の闇の中、老婆の囁く「なんまんだぶ…、なんまんだぶ…」という声を聞きながら意識はゆっくりと消えていった。
引き続き名古屋観光
昨日に引き続き今日も名古屋観光。今日はあいにくの雨でした。
テレビ塔。小雨の中、鷺が立っていました。
ゴッホとゴーギャン展をやっていたので、愛知県立美術館にも行ってきました。ゴーギャンは昔から結構好きです。ゴッホは学生の頃は全く好きではなかったのですが、大人になってから良さがわかってきました。
ゴッホって知名度が高く、みんな好きだと言っている印象があるけど、結構わかりにくいと思うんです。
ゴッホとゴーギャンの共通の特徴は色です。暖色と寒色、明色と暗色を混在させることで変化と筆のタッチを出します。ここまではわかりやいのですが、良さを知るには、ここからその色が何を表現しているかを読みとらないといけなくこれは私もきちんとできている自信がないです。
ちなみに日展もやっていたので見てみましたが、気に入った作品はありませんでした。
ビブリオマニア。夕橙(id:yudie)さんから教えて貰ったお店です。そっち系を意識したオシャレショップかと思ったら、思いっきりアンダーグランドショップでした。ホテル暮らし中のため買い物はしませんでしたがお店の愛を感じました。
名古屋市科学館。プラネタリウムが見たかったのですが、とてつもなく並んでおり、またひとりで見に来ている人なんていなそうでしたので辞めました。悲しい…。
美術館梯子は疲れるので市立美術館はパス。
伏見地下街。見たかった…。見たかったのに、何かのイベントで貸し切られていて入れませんでした…。地下街が貸し切られていているなんて…。悲しい。
まるで摩天楼!
吉田博展
名古屋ボストン美術館の吉田博展。
木版画大好きなので前から興味があったのですが、たまたま転勤先の名古屋でやっていたので、これ幸いと時間の都合をつけて見てきました。
多目の多重刷りによる色合いが特徴なのですが、実は私が気になっていたのはそこではなく、この人構図の取り方が物凄く私と近いんです。(勿論私より上手です)
画中の密と疎がきっちり切り替えてあり、構図のスタティックさ、ダイナミックさも極端に取ります。また、中心となる人や建物等のモチーフに対して、木や花を強く重ねることで木や花側を全面に押し出す等、私が好むやり方が高いレベルで使われてます。良かったです。
名古屋ボストン美術館は常設展がないため比較的短時間で回れます。ビルの一角なのでじっくり見るには物足りないですが、空いた時間で見るには丁度良いです。オフィス街にあるので、近場の方は昼休みにでも覗いてみてはどうでしょうか?