夏は蛾。蛾は夏一番よく表現している虫である

昼間の残熱で膨張しぼやけた月の下、虫の声を聞きながら帰路を急ぐ。水銀灯の下を通ると一匹の蛾が地面でバタバタと暴れていた。じっとその様子を眺める。羽が傷ついておりもう飛ぶことはできない。ただ、地面をバタバタと叩き鱗粉を撒き散らしている。明日には蟻に引かれて跡形もなく消えてしまうだろう。シャツがベッタリと汗で肌に張り付く。僕はもう一度蛾を見ると、ひとつ大きなあくびし、黙って踏み潰した。バチッと音を立て電灯が消えた。辺りが漆黒の闇に包まれる。空を見上げるといつのまにか月は分厚い雲に隠れていた。遠くでサイレンの音が微かに聞こえる。すーっと世界が遠くなり、体が宙に浮いているような感覚にとらわれる。僕は蛾となり闇の中を舞ってゆく。どこまでも続く永遠の闇を舞ってゆく。

 

夏は夜。月のころはさらなり。

枕草子は日本人の心を非常によく詠ってますね。私はこんな時間にblog更新しているくらいの夜型人間なので、夏の描画は結構しっくりしきます。この歳になっても夏はふと真夜中の散歩に行きたくなります。まぁ、不審者に間違われるのでしませんけど…。