台風
不謹慎なことを言うけど、私は台風が大好きだ。
突如やってくる非日常、窓を叩く雨音、地獄から吹き付けるような風。
子供の頃から大好きで、大人になっても何も成長せず好きなままだ。
小さい頃、北関東の祖母の家に泊まり行った時に台風が来たことがある。
雨戸を全て閉め夕方だというのにまるで夜のようだった。
祖母は早々に寝てしまい、私は母親と暗い部屋で小さなブラウン管のテレビで少し乱れた台風ニュースを眺めてきた。いつも見ている九州のニュースとは違う関東のニュース。
黒電話が鳴る。叔母が心配し電話をかけてきたのだ。横に吊るされたメモ用紙がヒラヒラと揺れる。スーパーのチラシを4分割して紐を通したメモ用紙。
ザァーと風雨が雨戸を叩き、戸棚がガタガタと揺れる。戸棚の中には三匹の木彫りの梟が飾られており、いつもとなにも変わらず空ろな眼で中空を見つめている…。
何十年も前の記憶だ。
祖母は10年前に死に、その家ももう残っていない。
今でも闇の中にふっとあの木彫りの梟の眼を思い出す時がある。
イラストはのんびり進めています。