木こりとヒノキの木
昔、まんが日本昔ばなしで見た記憶がある話。まわりに聞いてもみんな知らない話。
話を読めるものにするために、一部記憶にない部分は私が想像で補っています。そもそもこんな話無かったのかもしれないので、細かい事は気にしないで下さい。
昔ある所に木こりがいました。
とても腕の良い木こりで、斧一本でどんな木でも切り倒すことができました。
木こりは山麓の村に住んでいました。
村から見える山の頂上には、それはそれは大きな大きなヒノキ(?)の木が一本立っていました。
木こりはその木を切ろうと毎日斧を担いで山を登るのですが、いざ頂上に着くとどこにもそんな木はどこにもありません。
おかしいな、と思い山を下りると確かに山の頂上に木が見えるのです。
そんな日々を過ごしていたある日、木こりは村の仲間に誘われ山へ遊びにでかけました。
仕事は忘れ、景色を楽しみながら山を登ります。
頂上へ着くとそこには立派なヒノキの木があるではありませんか。
「ややや、これは一体どういうことだ…」
木こりは首を傾げながら、その木の下でお弁当を食べ帰ってきました。
翌日、あの木の正体を探るため木こりはまた山を登りました。いつもと違い、荷物も持たずに山を駆け上がって行きます。
頂上に着くと、果たしてそこには大きなヒノキの木があるではないですか!?
木こりは飛び上がり、転げるように家に駆け戻ると、斧を持ってまた山の頂上へやってきました。
すると、どうでしょう?
先程までそこにあったヒノキの木が今度は影も形もありません。
木こりはまた首を傾げ、山を下りました。
次の日も、その次の日も、木こりは同じことを繰り返しました。
何度山に登っても、斧を持っていると木はなく、手ぶらで登ると木があります。
これは一体とういうことだ?
「オラに切れねぇ木なんてねぇ!」
木こりはどうしてもその木を切りたくて仕方ありません。
ある朝早く、木こりは何も持たずに山へ登りました。
朝霧の中、そこにはあのヒノキの木が静かに立ってました。
木こりは暫くヒノキの木を眺め、大きく口を開けると何も言わずその木の幹に齧りつきました。
がぶり、がぶり、がぶり…。
木こりの口から血が流れ、ヒノキの木の幹に一筋の赤い糸を作ります。
がぶり、がぶり、がぶり…。
がぶり、がぶり、がぶり…。
それ以来、その木こりを見たものはいないそうな。